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レベニューマネジメントの組織上での位置づけ- 1

日本におけるレベニューマネージャーの組織上の位置づけ、および所属はホテルにより様々ですが、おおよそ次の2つに分類される場合が多いと思います。

・宿泊部づけで宿泊部長、もしくは宿泊予約課長の直属

・営業部づけで営業部長の直属

残念ながら、どちらの組織体系も「ホテルの売り上げを最大化する」という使命をもったレベニューマネージャーとして適するものではありません。今回はそれぞれの場合の課題を挙げていきたいと思います。

宿泊部づけで宿泊部長・宿泊予約課長の直属

こういった組織体系の場合、往々にしてレベニューマネジメント課、もしくはレベニューマネージャーは宿泊部の部門として業務を行っています。宿泊部のもとに独立してレベニューマネジメント課が存在する、もしくは宿泊予約課の中に担当者がいるといったような組織体系になっている場合が多いでしょう。こういった組織の中では、レベニューマネジメントはオペレーション色が強い位置づけになっているのではないかと思います。先にご紹介したレベニューマネジメントの仕事に照らし合わせると、おもに戦術的な仕事を黙々とこなしていく「コントローラー」のような役割が期待されている場合が多いと思います。このような組織体系の場合、そもそもレベニューマネジメントにあまり戦略的な要素自体があまり期待されていないことの表れだとは思いますが、レベニューマネージャーは販売の責任、売り上げの責任というよりかは、ホテルオペレーションを回していく職責が期待されている面が強いのではないでしょうか。こういった組織体系である限り、どうしてもレベニューマネージャーに能動的な役割を期待する、また戦略的な役割を期待することは難しくなります。また販売の責任、売り上げの責任を職責として問うことも酷というものでしょう。繰り返し述べているとおり、レベニューマネジメントはホテルの販売そのものを担うことを仕事としており、ホテルにおける売り上げと利益を最大化することがその使命です。レベニューマネージャーにオペレーションとしての役割を期待し、そのような組織的位置づけになっている場合、売り上げを最大化するという使命を達成することが時には難しくなる場面も往々にして発生します。なぜならば、「売り上げをあげること」と「オペレーションをまわすこと」は時に相反する場合があるからです。ここでは、私が実際にホテルの現場で働いて時によく目にした場面を紹介しましょう。

今日は土曜日、もうすぐ3時になるこの時間帯から徐々にフロントは混雑し始めます。3時のチェックインをめがけて多くのお客様が到着されるからです。土曜はホテルにとってかき入れ時ですので、今日も稼働は非常に高く、あとはスイートの1室の空室を残すのみとなりました。ただ土曜日は当日予約も見込めるため、少し価格の高いスイートですが、販売できるチャンスはあるとみています。そこへ宿泊部長から電話がかかってきました。「今日の残り1つのスイートなんだけどさ、それ売らないでくれる?販売停止にしておいて」売り上げを最大化させるという使命がある私(レベニューマネージャー)にとって、その指示は納得できるものではありません。「でもまだ1室余っていますよ?このまま販売せずに置いておくんですか?」このように食い下がりますが、宿泊部長は次のように言いました。「お部屋の清掃が全く追いついていなくてさ、もう3時なのに全然お部屋の準備ができていないのよ。このまま販売されても到着時間までに部屋の清掃が間に合わないかもしれないから、もう販売しないで」私は釈然としないながらも、上司である宿泊部長の指示であることから、残室が1室あるスイートを販売停止としました。

宿泊部長は部屋の清掃状況を鑑みて、残室があるにも関わらず部屋の販売を停止させました。チェックインにきた目の前のお客様に集中し、全てのお客様に満足した滞在をしてもらうことが使命の宿泊部長にとって、到着時に部屋の準備ができていないという状況はお客様の不満足につながる可能性が非常に高く、この判断は自然なことなのかもしれません。既にチェックインの時間になっているにも関わらず、多くの部屋の清掃がまだ終わっていない状況においては、間もなくお客様が到着する部屋の清掃だけでも手一杯なのに、さらにもう1室分の清掃が増えて、その上、そのお客様があと30分後に到着するなんてことになれば、お客様にご迷惑をおかけするのは目に見えています。ここには「満足するサービスの提供」が最大の職責の宿泊部長と、「ホテルの売り上げの最大化」が職責のレベニューマネージャーに、優先順位の相反が生じます。このような中で、レベニューマネージャーに売り上げの最大化を求めることは難しいことは、この例からよくお分かりいただけるかと思います。

次回はもう1つのケース、営業部づけで営業部長の直属という組織体系における課題を見ていきたいと思います。

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