レベニューマネジメントの組織上での位置づけ- 2

前回の「レベニューマネジメントの組織上での位置づけ- 1」では、レベニューマネージャーが宿泊部で、宿泊部長づけになっている組織での課題を申し上げました。それではもう1つのケース、営業部づけで営業部長の直属の場合の課題を見ていきたいと思います。

営業部づけで営業部長の直属

このような組織体系の場合、ホテルの売り上げを最大化するという職責があるレベニューマネージャーにとっては、より「販売する」という要素の強い位置づけとなります。ホテルの販売そのものを担うレベニューマネジメントの使命と性格に、より沿った組織体系となっているといえるでしょう。しかし、一見すると同じ動機づけで動いているように見えるこの体系でも、時に利害の対立が生じる場合があります。

ランチを食べて自席に戻ると、営業部副部長が私(レベニューマネージャー)を待ち構えていました。「〇月〇日の1泊なんだけど、うちのお得意さんのレベニュー商事から30部屋の団体予約が受注できそうなんだ。予算は1部屋25,000円の税サ込って言われているんだけど、いいよね?この料金で」私は団体予約の条件を再度ヒアリングし、最適な料金を算出するためにディスプレイスメントアナリシスを行ったあと、最低料金を少なくとも32,000円とはじき出しました。「この日は既にフォーキャストが満室を示しており、その団体を入れると、これから予約される他の需要を断らないといけなくなります。そのためには少なくとも32,000円以上で受注してもらわないと、結果的にその団体を断ってこれから予約される他の需要でまかなった方が、売り上げを最大化できます」しばらくしてPMSを見ると、レベニュー商事の団体予約が25,000円で確約されたという状況になっています。営業部長に相談しにいくと「その団体予約は、私が25,000円で受注していいって指示したよ。うちのお得意さんだしなかなか断りにくいんだよ。彼は今月の営業成績で苦戦しているし、少しくらいサポートしてあげないと」

営業部は確かに販売そのものを担っており、ホテルの売り上げを伸ばすという職責がありますが、同時に個々のお得意様(アカウント、クライアント)の担当者という位置づけでもあります。つまり自らの担当アカウント、お得意様の満足度を維持する、または高めるという職責もあるわけです。そうなると、上記のように「お得意様の意向に沿った形で販売したい」という心情が働くのは自然のことですし、そのお得意さんの機嫌を損ねるような提案をしてしまうと、のちのち、ビジネスもやりにくくなるかもしれません。また自らの営業成績がボーナスの査定にも影響する場合は、誰の成績数字にも影響しない個人客の予約をウェブサイトから取るくらいだったら、少しくらい売り上げに響いても、営業成績に反映される営業部員の予約を取りたいという、お情けのような気持ちも働くでしょう。ここで私は「常に導き出される損得の計算のみで、団体予約の受け入れ可否を決めるべきだ」と言いたいわけではありません。定期的にホテルにビジネスを送ってくれる、またこれからも定期的な送客が期待できるお得意様のいわゆる「ライフタイム・バリュー」(長期的な価値)は、常に考慮に入れなくてはならない要素だと思います。ただ、そういった数字以外の要素も含めた総合的な決定が、ホテルの売り上げを最大化するという使命のみをもって、独立した職責をもった人間によって行われていない点に問題があると考えています。

ここまで書くと、既にレベニューマネージャーのあるべき組織上の位置づけがお分かりかと思いますが、レベニューマネージャーは「いかなる時もホテルの売り上げを最大化するという職責によって判断ができる、独立した立場の人間」であることが望ましく、組織上の位置づけもその環境が成り立つような位置づけであるべきだといえます。ホテルによってはこのような位置づけとするため、レベニューマネージャーを営業部長の権限と同列に配し、同等の権限で営業・マーケティング統括部長づけにしたり、また営業・マーケティング部長と同等の権限を与え、総支配人の直轄とするケースは、特にレベニューマネジメントがきちんと体系化されその手法が重んじられているインターナショナルチェーンホテルで一般的に見られます。

当然、このような組織的位置づけとするためにレベニューマネージャー、またはレベニューマネジメント部長に相応の実力と判断力、行動力が求められることは言うまでもありません。レベニューマネジメントを戦術的な面だけでなく戦略的な面から理解し、自らリードしていくような人材が求められるわけですが、まだまだレベニューマネジメントに戦術的な職責が期待されているような現状においては、高度なレベニューマネジメント人材の育成も大きな課題として挙げられるでしょう。