レベニューマネジメントの戦術的な仕事」では、現在、レベニューマネジメントにおける戦術的 (タクティカル) な仕事は、おもにシステムにより自動化されていると申し上げました。それを担っているのが、レベニューマネジメントシステム (RMS) と呼ばれているシステムです。RMSは、データを収集して読み解く「データプロセシング」と、その結果をPMSなどに返す「アウトプット」の2つの側面を自動的に行います。

まずは、レベニューマネジメントシステムの仕組みを説明しましょう。RMSを最大限に活用するためには、まずPMS、 CRS (セントラルリザベーションシステム)、チャンネルマネージャー間の完全な相互連携が確立されていることが大前提となります。PMSとRMS間の通信において、PMSはホテルの状況に関する情報を定期的にRMSに送ります。この情報には、オンザブックでどれくらいの部屋が販売されており、売り上げはいくらかという日々のパフォーマンスの状況、セグメントごとのパフォーマンスの状況、部屋タイプごとの空室状況や、現在販売されている部屋の価格情報などが含まれます。RMSは、このPMSから送られた情報、さらには別途外部接続を行って入手しているマーケット情報をもとにフォーキャストを行い、それに基づく最適な販売方法を導き出します。

RMSがデータプロセシングを進めるための情報の柱となっているのは、ヒストリーと呼ばれる過去の実績です。既に蓄積された膨大な過去のデータをもとに、アルゴリズムが何万通りものシナリオの計算を行って、状況に応じた最適解を提示していきます。さらにRMSが参照するのは、該当ホテルの過去の実績だけではありません。いくつかのマーケット情報収集ツールと自動連携し、例えば競合ホテルの販売価格、競合ホテルのオンザブックの状況なども加味した販売方法の決定を行っていきます。

最後に、RMS内で導き出した最適解をPMSに返します。それは例えば「○月○日にスタンダードルームを○部屋オーバーブックさせます」という在庫情報であったり、「○月○日のスタンダードルームは○円以上で販売して下さい」といったレートハードルの情報などが含まれます。これらの情報を受け取ったPMSは、その情報に基づいてPMSの在庫、料金情報を自動的にアップデートします。オーバーブッキングの指示に対しては自動的に在庫を積み増し、20,000円というレートハードルが設定された日の、19,999円以下の料金プランを自動的に販売停止とします。このサイクルを24時間、365日、休まずに行なっているのがレベニューマネジメントシステムです。

このRMSが担う仕事は、私が先に「レベニューマネジメントの戦術的な仕事です」とご紹介したほとんどの項目を網羅しているのがおわかりいただけますでしょうか。RMSは、これまでおもに戦術的な仕事をこなしていくことが業務であったレベニューマネージャーの仕事を再定義し、より戦略的な仕事へと集中させる非常に革新的なシステムと言えます。

現状において、ホテルにおけるRMSを提供している企業はIDeaSやDuettoといった海外企業であり、私の知る限り、日本企業でこのレベニューマネジメントシステムを提供している会社はありません。日本のいくつかの新興企業がレベニューマネジメントシステムと名の打った商品を紹介していますが、ウェブサイトなどから得られる商品知識の範囲内においては、残念ながらその完成度はまだ高くなく、レベニューマネジメントシステムというよりかは、レベニューマネジメントサポートツールと理解する方がより適切でしょう。現在の日本においては、おもにインターナショナルチェーンホテルを中心にこのRMSは幅広く活用されていますが、PMSとの相互連携の問題など、日本のホテルに普及していくには依然、高い壁があると言えます。