ダイナミック料金とベストアベイラブルレート―需要に応じて変動するBAR料金の仕組みとその管理方法

多くの宿泊施設においては、まだ「通常料金」、「正規料金」という料金帯が存在するかもしれません。いつ、どこで、誰が、どの滞在日で予約しても変わらない年間固定料金です。一方で、特にインターナショナルチェーンホテルを中心に、この正規料金といういわゆる「固定料金」という言葉、その考え方はほぼ死語となりつつあります。

これは、ホテルで需要に応じた価格変動を行う「ダイナミック料金」(ダイナミックプライシング)が幅広く普及してきていることが背景にあり、ダイナミック料金の環境下においては、そもそも固定料金という概念そのものが存在しません。その代わりに、需要に応じ、日によって販売価格が変わるダイナミックな宿泊料金体系が導入され、ベストレート、ベストアベイラブルレート、デイリーレートなどと呼ばれています。(私自身はまだ、日本語の最適な呼称に出会ったことがありません・・・)いずれも、「需要によって価格がダイナミックに変動するという前提の中で、日々の1番良い料金」という意味合いを持ちます。

一方で、このベストアベイラブルレート(以降、BAR料金と記載)のコントロール方法はいくつか存在し、ダイナミック料金(ダイナミックプライシング)を導入している施設の中でも、そのコントロール方法には幅があります。そしてこのコントロール方法の違いは、「売り上げの最大化を目指すうえでの幅の違い」も意味します。その方法の限界から、コントロールできる幅が少なく、最大化を目指す余地(幅)が少なくなってしまう場合もありますし、より大きな幅でのコントロールを可能にしている方法を取っている場合は、当然、そこから得られる果実(最大化の幅)も大きくなります。

今回は実際に用いられるおもなBAR料金の管理方法についてご説明したいと思います。

1、 平日/週末料金(カレンダー料金)

日本のホテルでダイナミック料金(ダイナミックプライシング)モデルのBAR料金を採用しているホテルや宿泊施設のほとんどが、このやり方を行っていると思います。例えば、同じスタンダードルームであっても、平日は1室あたり15,000円、週末や特異日は5,000円増しの20,000円などとする管理方法です。

初めにカレンダーに基づいて平日/週末料金(または複数の段階にわたるシーズン料金)を設定し、以降は予約の積み上がりペース、ブッキングペースに合わせて料金をさらに管理、変更することはなく、終始、設定料金に応じた販売が行われるため、ダイナミック料金とは言いつつも、半固定料金という側面が強いBAR料金の管理方法といえると思います。

日本の旅行会社への卸料金であるホールセール料金も、基本的には料金登録時にカレンダーに基づいた料金設定を行い、その後、予約のペースに応じた料金コントロールは行わないこの料金管理方法を採用しています。

ホテルにとっては、一度料金を設定してしまえば予約のブッキングペースの管理と、それに応じた料金コントロールを行わなくて済みますので、取り組みやすく、なおかつ管理もしやすい管理方法といえるでしょう。しかしながら、一度設定を完了すると以降は変更しないという点は、売り上げを最大化するという観点からすると非常にもったいない、最大化の余地を大いに残した課題のある管理方法といえると思います。

2、 デイリーバー (Daily BAR)

BAR料金のコントロール方法としては、1番スタンダードな管理方法といえるでしょう。一方で、日本においてはこの手法を採用する上での技術的土壌が未熟な場合も多い(PMSやチャンネルマネージャーなどが、この手法に技術的に対応していない)という現実もあります。各日にちごとに、あらかじめ設定した料金帯の中から最適な料金帯を当てはめていき、その後も予約のペースに応じて、料金帯の上げ下げを可能とする管理方法です。

下記のように、あらかじめBARの料金帯に応じた各部屋タイプの料金を決めておきます。

一般的には、1番真ん中の料金帯に、販売する機会が1番多い価格を設定することが多く(上記の例ではBAR 4)、各料金帯間の差を、〇〇円や〇%といった等間隔の料金で設定していきます(上記では2,000円)。この上で、まずは初期設定としてフォーキャストに基づく最適な料金帯を当てはめていきます。

このDaily BARの優れている点は、一度設定した後も、各日にちのブッキングペースの状況に応じて、BARの料金帯を上下に柔軟に変えられることです。例えば、ある日の予約のブッキングペースが予想より好調なため、当初はBAR4で販売していた料金をBAR6に変えるという場合も、料金額はあらかじめ「料金帯」という形で設定が済んでいますので、その料金帯だけを操作すれば、その操作に応じてすべての部屋タイプの料金額が一律に変更されます。ホテルの日々の料金操作を簡便にするとともに、状況に応じて躊躇なく売り上げ最大化のための戦術を実行していくことが可能となります。

厳密にいうと、例えこのDaily BARの手法を採用していなくても、日にちごとやブッキングペースに応じて日々のBAR料金を柔軟に変更していくことは可能ですが(変更に応じて、新しいBAR料金の金額額を都度マニュアルでアップデートしていく)、接続しているすべてのチャンネルの料金をその度変えていく、BAR料金と連動しているその他の料金も一緒に変えていくというような作業の手間を考えると、お世辞にも懸命な方法とは言えず、BAR料金をより柔軟にコントールしたいという場合は、結果的にこの方法を採用せざるを得ないのではないかと思います。

一方で、この管理方法の課題は、例えばスタンダードの部屋タイプの料金帯だけ価格帯を1つ上げたい、もしくはスイートの部屋タイプの料金帯だけ価格帯を1つ下げたいといった、部屋タイプに応じた細かい管理ができないという点です。

もし、PMSやCRS、 チャンネルマネージャーが、このような部屋タイプごとの細かい管理に技術的に対応可能であれば、理論上は実行することも可能ですが、各部屋タイプごとに料金帯を細かくコントロールする管理方法をマニュアルで、人間の手作業のみで行うには限界がありますし、例えそれを人間の手で細かく操作できていたとしても、はたしてその手法から本当に数字上の効果が出ているのかという点は、個人的には非常に疑問です。

また、ホテルによっては料金帯の価格差を非常に細かく、例えば100円刻みや200円刻みで設定し、料金帯を100近く用意しているホテルもありますが、このような細かい刻みでの料金管理も、特にそれらの管理をすべて人の手で行っている場合は、はたしてその効果がどれくらい表れているのかという点で疑問です。

いずれにも共通することは、レベニューマネジメントはある程度のダイナミクスさを必要とする管理手法であると考えるからです。ある程度のまとまった束を、ダイナミックにコントロールすることが積極的な販売管理を方向づける中で、それを細かく刻んで管理しすぎることは、レベニューマネージャーにとって細かく管理すること自体が目的となり、結果的に「管理することで満足してしまう」懸念があります。

部屋タイプごとの管理や、わずかな金額刻みの管理といったより細かいアプローチは、レベニューマネージメントシステムを導入したうえですべて自動化させるのであれば有効的なやり方だと思いますが、マニュアル対応による細かい管理の効果には疑問があります。

3、 バーバイレングスオブステイ(BAR by length of stay)

このBAR料金の管理手法を用いているホテルにはまだほとんど出会ったことがありませんが、もう1つのBAR料金の管理方法が、「到着日 x 滞在日数」でBAR料金の管理を行う手法です。上記で紹介したDaily BARと同じく、あらかじめ料金帯を設定するという手法に変わりはありませんが、Daily BARでは到着日ごとに割り当てていたこの料金帯を、「到着日と滞在日数」を組み合わせた条件で割り当てます。

滞在客の到着日のみならず、滞在日数に応じた価格コントロールができることにより、滞在客の滞在日数に、より報いることができる手法で、なおかつDaily BARと違って、滞在中に毎日部屋の価格が変わることもありません。

例えばDaily BARでは、滞在日数に関わらずその日ごとの料金が割り当てられていますので、1月12日から3泊する人が、1月12日と13日は1泊あたり16,000円、14日は14,000円と料金が日々変動し、この複雑さが消費者の不信感を招くこともありますが、あらかじめ滞在日数をもとに料金が算出されているBAR by length of stayの手法では、1月12日から3泊は毎日14,000円となり、料金変動はありません。

この管理方法の難点は、皆さんも表を見て面食らったように、人間の手によってマニュアルでコントロールすることの難しさです。滞在日と滞在日数に応じて料金をコントロールするという、2つの要素を同時に考慮しなくてはならないこの管理方法は、もはやレベニューマネージメントシステムによって自動的に動かすほかは、現実的な運用が厳しいBAR料金の管理方法であるといえます。

少し述べましたが、BAR料金をダイナミックに動かしていく、特に週末/平日料金という半固定のカレンダー料金ではなく、上記でご紹介したDaily BARやBAR by length of stayのBAR料金の管理方法を検討、実践するにあたっては、現在使用しているPMSやその先につながるそれぞれの販売先、またそれを仲介するチャンネルマネージャー(サイトコントローラー)が、それぞれのBAR料金の運用方法が技術的に対応しているか、またその対応の深度(どこまで対応可能なのか)をきちんと確認することが重要です。

例えば、どのOTAであっても、1月12日は〇〇円、1月13日は〇〇円というように単に料金額のみを1つ1つ登録していく運用方法であれば対応可能かと思いますが、はたしてPMSとして、さらに個々のOTAとして、Daily BARの運用に対応しているか、もしくは滞在日数を反映したBAR by  length of stayの運用方法に対応しているかという、「ディストリビューション全体における技術的要件」はぜひ確認をしなくてはなりませんし、逆に技術的要件の限界により、ホテルとして限られたBAR料金の運用方法でしか管理ができないという場合も非常に多くあります。

ここにも、「売り上げをもっと最大化したいし、その手法(BARの管理方法)もわかっているので試したいのだが、肝心のPMSがその手法に対応していない、チャンネルマネージャーやOTAがその手法に対応していない」という、ホテルディストリビューションが抱える根深い問題が存在します。