ホテル業界においても「いかにデータを活用するか?」というデータ活用の重要性が取り上げられるようになって久しいですし、ホテルにおいては特に、レベニューマネジメントがデータに基づいた決定を日常的に行っています。レベニューマネージャーにとって1番身近な例を挙げれば、それはフォーキャストでしょう。

ヒストリーやオンザブック、マーケットのデータなどを参照して需要予測を行っていく、いわばレベニューマネジメントにとって要ともいえる作業ですが、これはデータ活用の最たる例といえるのではないでしょうか。また、宿泊プランを作成するにしても、過去の様々な実績から得られるデータや知見をもとに、消費者の嗜好や傾向を把握することでプラン作成にいかすということは、私たちが日常的に行っていることです。

ところで、このフォーキャストなどを行うにあたって参照するPMSのデータの信頼性について、あなたは疑問を持ったことはありますか?あなたのホテルのPMSに入力されているデータは、それぞれの予約の情報がきちんと正確に反映された状態になっているでしょうか?多くの人にとって、PMSに実際に登録されているデータに疑問を持つなどということは、ピンと来ないことかもしれません。

私がまだレベニューマネジメントに関わるようになって間もないころ、私はしばしばオンザブックの数字の乱高下に悩まされていました。せっかくいい調子でオンザブックが積みあがっていても、ある時に突然その積み上がりがガクッと落ちたり、一定水準の平均単価を維持していたとしても、いきなりそれが数千円単位で落ちるという場面にしばしば遭遇しました。この時に色々と調べていくと、どうやらPMSに入っている情報の確度に問題があるかもしれないという可能性に気付いたのです。

例えば、PMS上で確約の状態となっている予約で、在庫が既に引かれている(Deduct)状況にも関わらず、実際はまだ確約になるかわからない「仮予約」の状態の予約が多数あったり、宿泊予約や営業部が「とりあえずおさえておいて」という程度の予約を「在庫がなくなってしまうと大変」という理由で、無理やり確約としてしまっているということがしばしばありました。

また、例えそれが本当に確約された予約であっても、その予約に誤った料金設定がされている、または料金設定がされていない(いわゆる0円予約)ことにより、本来の料金とは異なる料金設定で記録されている予約も散見されました。

こういった不正確なデータは、レベニューマネジメントの仕事に大きな影響を及ぼします。例えば、残室が既に30室を切ったがゆえに、ステイコントロールやBARの料金帯を変えるという戦略を選択し、それにもとづく作業をしたものの、実際には既に確約となっていた20部屋が仮おさえの状況で、翌日に在庫として戻ってきたという状況は戦術を大きく狂わせますし、価格が反映されていない予約、0円予約があると、全体の平均単価を大きく下に下げフォーキャストを見誤る要因になります。

以来、毎日のオンザブックのデータを収集する前の「PMSの予約データのスクリーニング」は、私の日課となりました。幸い宿泊予約の経験があったこともあり、どのような予約がいわゆる「におうか」ということはだいたい見当がつきましたし、予約を入力する側から見た、そのような確度の低いデータとなりうる予約テクニックも熟知していました。

仮予約とおぼしき予約はすぐに状況を確認してもらい、仮予約であれば在庫を引かない管理を、決定予約であればクレジットカードの確約をもらう、予約が複数部屋にわたる場合はそれぞれの部屋のネームリストをその場で入力してもらうなど、「予約をきちんとした状態にし、不確実要素を可能な限り減らす」というオペレーションを徹底してもらいました。

在庫への影響がとりわけ大きい団体予約に関しては、より厳しい在庫運用が求められます。きちんと契約書を発行し、契約書に双方の署名が入るまでは、その部屋数分を在庫に反映させることはしませんでしたし(空室状況の保証はできないということ)、契約書に記載されている部屋数以上に、いわゆる担保として在庫をおさえることは決してしませんでした。

残念ながら、いくつかのホテルのレベニューマネージャーから「この団体予約については営業の管轄なのでよくわかりません」というコメントを何回か聞いたことがありますが、部屋の在庫コントロールはレベニューマネージャーの責務です。例えそれがどの予約元からの予約であったとしても、団体の予約であろうが、OTAの予約であろうが、コーポレートセグメントの予約であろうが、それが部屋の在庫に関わる、料金に関わる限り、それはレベニューマネジメントの領域ですし、そこで発生した問題はレベニューマネージャーの問題でもあります。

レベニューマネージャーはすべての予約に対して当事者意識を持ち、常に正確な予約データを把握するために、既に確約されている予約に対してはもちろんのこと、確約されるかもしれない予約に対しても注意を払い、予約情報をきれいな状態に保つこと、それがひいては正確なフォーキャストにつながって適切な判断を促し、売り上げを最大化することにつながります。

また、マーケットセグメントや予約元、チャンネルなどの統計コードが正しく入力されているか、この点もぜひ注意したいところです。

私がまだ学生時代にカフェでアルバイトをしていた頃、そのカフェのPOS(レジ)は、まず来店客の属性を入力することで商品選択などの次のステップを移ることができました。アルバイトで経営意識の低かった私は、どの来店客にも「男性/中年/1人」という属性を習慣的に入力することで、注文選択画面に素早く映るように対応していましたが、このような慣性的なデータ入力は行われていませんか?特に、マーケットセグメントはレベニューマネジメントにおいては根幹で、そのデータの正確性はレベニューマネジメントの成否に直結します。

例えば、朝食つきの一般料金(リテールセグメント)で作成されている予約のマーケットセグメントが、ホールセールになっていませんか?コーポレートのマーケティングセグメントの予約で、平均単価が異常に高くなっている日はないでしょうか?こういった点に気をつけて、入力されているデータの正確性に対する継続的な観察を習慣づけることで、それは正確なデータの収集につながることはもちろんのこと、自らにとって注意を払うべき予約を素早く把握することにもつながります。

また、常日頃から、特に宿泊予約課や営業部など実際に予約を作成する部署に対しての、正確なデータ入力に関する啓蒙と、特にマーケットセグメントやチャンネルに関する詳細な定義の説明、その継続的なトレーニングは欠かせません。もし、あなたに宿泊予約課の人から、「この予約のマーケットセグメントは何に該当しますか?」という再確認の問い合わせがしばしばあるようであれば、正確なデータ入力に関する意識が徹底されていると思います。

また、予約業務にできるだけ人の介在を減らし業務を自動化するという点は、データの正確性を期すという点からも理に適っています。人の手が介在するということは、それだけデータ入力のミスを誘発しやすい環境でもあるからです。

例えそれが部分的であったとしても、予約通知の手作業でのPMSへのアップデートは、どうしても受注からPMS反映までに時間的ギャップができることで、それがレベニューマネージャーにとっての状況の正確な把握を妨げ、行動の遅れにもつながります。手作業での予約入力業務をできるだけ減らし、予約の受注からPMSへの情報アップデートまでを可能な限り自動化し、その作業が瞬時に行われることは、レベニューマネージャーが常に質の高いデータを参照することができるという点でもぜひ、進めてほしい環境整備です。