“やっつけ”でパッケージを作っていませんか?―「だれに、なにを、どうやって」販売するか(2)

前回の「“やっつけ”でパッケージを作っていませんか?―「だれに、なにを、どうやって」販売するか(1)」において、どんなパッケージであっても明確なターゲット(だれに)が存在し、そのターゲットにあわせたプラン訴求の内容(なにを)と販売網の構築(どうやって)という、「だれに、なにを、どうやって」の一連のプロセスに沿ってパッケージは構成されるべきであるという事を申し上げました。

また、パッケージとは必ずしも「ディスカウント」などの金銭的側面でのインセンティブを伴わないといけないという事ではなく、「だれに、なにを」によって、必ずしもそこには金銭的なインセンティブを伴う必要はないということも、実例を挙げて申し上げました。

今回は、パッケージ販売に関する「だれに、なにを」の軸がきちんと定まったことを前提に、その軸をベースに組み込んでいく「どうやって」の要素、価格設定や販売網の構築などの点について見ていきたいと思います。

価格設定(プライシング)

この世に無料のサービスは存在しないのと同様、無料のパッケージ要素も存在しません。例えば、よくオンラインショッピングなどで見られる「送料無料」という通販商品も、メッセージ性として送料無料といううたい方をしていますが、実際はその送料を商品発送者が負担しているように、どのようなパッケージ要素にも必ずそのコストは発生します。そのコストを顧客に転嫁しないのであれば、ホテル側が負担するまでです。

「部屋代のみの料金より、何かが含まれたパッケージ料金の方が安い」、「部屋代のみの料金より、朝食付き料金の方が安い」という非常に奇妙なパッケージの価格設定が多くのホテルで散見されますが、少なくともコスト分をきちんとパッケージ料金に転嫁させるのであれば、このような価格の逆転現象は絶対に起きえません。自らの利幅を削ってパッケージ料金をひねり出しているという事かもしれませんが、それであれば、商品体系全体の整合性を保つために部屋代のみの料金も並行して下げるべきですし、そうなれば宿泊売り上げ全体の利幅が下がってきますから、ホテルの体力はどんどん失われていくでしょう。

パッケージ要素として安易に組み込みがちなアップグレードやレイトチェックアウトも、アップグレード後の部屋タイプのアメニティが違ったり、レイトチェックアウトによって清掃員の残業代などが発生するのであれば、それには明確なコストが発生します。

例えそれがパッケージ要素の「価格」に価値、インセンティブを見出したパッケージ商品であったとしても、最低限、コストをパッケージ料金に転嫁させるような料金体系でないと、そのパッケージが売れれば売れるほどコストばかりが膨らんでいき、自らのクビが締まってくるような悪循環に陥ります。そのような、ホテルにとって継続的な成長を期待できない(売れば売るほど体力が奪われていく)プランの販売や、他の販売プランとの整合性が取れない料金体系は避けるべきです。

フェンス―最後まで予約可能なサマープロモーションが早割より安い!?

特にそれが価格に価値を見出すパッケージであった場合、他のプランやターゲットとしている顧客層以外とのプラン内容や価格の衝突を避けなくてはなりません。まずはそのパッケージのプラン内容や価格が、現在販売している他のパッケージと内容が被ったり、価格の整合性が取れていなかったりといったことはないですか?既にご紹介した「お部屋代のみのプランより朝食つきのプランの方が安い」、「最後まで予約可能なサマープロモーションが早割より安い」なんて事はないでしょうか?

ご存じの通り、早割は「到着の〇日前までに予約すること」を条件に割引が適用される料金体系です。そして本来早割は、一度該当料金で予約してしまうと、そののちに予約の変更やキャンセルはできません。予約条件に一定の制約(フェンス)を設けることによって、顧客にとっては「通常料金より割安に宿泊できる」という恩恵があり、ホテルにとっては「早い段階で予約を固められ、なおかつのちにキャンセルされる恐れもない」という恩恵がある、ウィンウィンのプランです。

これに並立して、予約条件に制限がない「ベストアベイラブル料金より〇%オフのサマープロモーション」が販売されていたらどうでしょうか?早割が有効なリードタイム期間(〇日前まで)については、「どちらか割引率が高い方のプラン」に優位性があり、もう一方のプランの販売意義は実質ありません。もしサマープロモーションの割引率が早割を上回る場合、もはや顧客にとっては早割で予約する意味すらありません。(この料金体系の組み方、「レートストラクチャー」についてはまた改めて取り上げます)

また、ターゲットとしているセグメント以外との衝突は起きていませんか?例えばビジネス客を狙ったパッケージを作りたいホテルが、宿泊料金に「空港までの往復タクシー」と「滞在中に無料で利用できるランドリー」の特典を含むパッケージを作ったとします。そのホテルの狙いは、連泊が多いビジネス客をもっと取り込むことによって、ホテル内での宿泊以外の利用を促し、ホテル全体の平均宿泊日数を少しずつ上げたいということが狙いでしたが、メーター料金より安価な空港までの往復タクシー料金にレジャー客が飛びつき、結果的に販売されたパッケージの多くが1泊や2泊のレジャー客向けになってしまいました。これによりホテルのタクシー手配やランドリーのオペレーションが大変になってしまったほか、チェックインやチェックアウト作業の頻度の増加によりフロントスタッフの増員を余儀なくされました。

ビジネス客をターゲットにして往復タクシーとランドリーを含めたパッケージを作成したホテルの狙いは、連泊を期待できるビジネス客にできるだけ多く、そして長くホテルに滞在してもらい、その分、ホテルにお金を落としてもらう事でした。

しかし一方で、最低宿泊日数などのステイコントロール、「フェンス」を使ってその顧客層のみにリーチする手段を十分に取らなかったため、結果的に本来であれば違う宿泊プランで、しかも場合によってはその宿泊パッケージより価格の高いプランで予約していたレジャー客が、そのプランに乗り換えることとなりました。

このように、プラン間、マーケットセグメント間、またはチャンネル間の予約の乗り換え、いわゆるシフティング(Shifting)は、多くのホテルが陥りがちな罠です。一見すると、新たに販売したプランにおける実績が増えることにより「新規の需要を掘り起こした」と勘違いしがちですが、注意しなくてはならないことは、このようなマーケットセグメントシフト、チャンネルシフト、プランシフトの状況においては、新規の需要は掘り起こされておらず、単に既存の需要や予約が違うマーケットセグメント間、チャンネル間で横にスライドされているだけだという事実です。このようなことを防ぐためにも、新たなプランや宿泊パッケージを販売する際は基本的に何かしらの制約となる囲い、フェンスを設定することが一般的です。

上記のケースの場合は、それが例えば3泊以上しないと予約することができない最低宿泊日数制限であり、またある特定の会員層のみに販売する料金であれば、予約時にコードの入力を必須とする予約者制限といったフェンスの種類が考えられます。このフェンスの設定により、ホテルは適切なターゲティングにもとづいたアプローチができるほか、既存予約の乗り換えやターゲットセグメント以外への影響を最小限にとどめることができます。

販売チャンネルはフェンスではない

最後にこのフェンスを設定する際に気をつけなければならないこと、それは「チャンネルは、それだけではなかなかフェンスとなりにくい」という盲点です。日本のホテルはチャンネルごとに料金を管理する手法が非常に一般的で、例えばあるプロモーションをOTAチャンネルにしか販売しないことで、それをフェンスとみなしているホテルも多いと思います。

しかし、現在の複雑なホテルディストリビューションにおいては、チャンネルはサプライヤーであるホテルからエンドユーザーに縦に直接つながっているだけでなく、数多くの中間業者が間に介在し、さらにこれらの中間業者は横につながります。つまり皆さんのホテルがABCトラベルにだけに販売している料金は、その流通形態と中間業者の存在により、知らぬ間にXYZトラベルにも販売されるという事が頻繁に起きる世界です。

このような複雑なディストリビューションネットワークの中で、もし自分たちがチャンネルごとに、きちんと各プランの販売をコントロールできていると考えているホテルがあれば、残念ながらそれは幻想です。単に表面的に、チャンネルごとにコントロールできていると勘違いされているだけで、実際は管理しているように販売できていないケースも往々にしてあります。「ある特定のチャンネルのみでの販売とすること」によってそれをフェンスとするのではなく、料金タイプ(レートコード)ごとのステイコントロール手法を用いてフェンスを設定するようにしましょう。