“やっつけ”でパッケージを作っていませんか?―「だれに、なにを、どうやって」販売するか(1)

レベニューマネージャーにとって、宿泊パッケージの造成と販売はおもな仕事の1つになっていると思います。ホテルで記念行事があるとそれに関連するパッケージを作成し、外部企業からの提携の話があるとパッケージを作成し、直近のパフォーマンスが良くないとなればパッケージを作成する、もはやルーティンのような作業になっているという方もいらっしゃるかもしれません。

一方で、この極度の「パッケージ文化」が多くのホテルにおいて宿泊パッケージが30プランも40プランもあるというような、一種の混沌状況を作り出していることも確かだと思います。宿泊パッケージは、それが直接的に予約につながるような内容であっても、人々の耳目を集めホテルの知名度を上げることが目的の内容であっても、広義の意味では売り上げに貢献することを目的として作ります。

つまり、どんなパッケージであっても明確なターゲット(だれに)が存在し、そのターゲットにあわせたプラン訴求の内容(なにを)と販売網の構築(どうやって)が必要になるわけですが、多くのホテルで販売されている宿泊パッケージを見てみると、そのほとんどが「ほぼやっつけ」で作成されていると思われても仕方のないような内容となっているケースが、非常に多くあります。

当たり前ですが、パッケージを作ったからといってそれが必ずしも売り上げ増につながるわけではありませんし、パッケージは売り上げを伸ばすための特効薬でもありません。皆さんのホテルも「パッケージを作って販売すること」自体が目的となっていませんか?

以前、「ホテルにおける商品数と購買の関係―  商品数を揃えれば売り上げは上がる?」で述べた内容にもつながりますが、プランを作ること自体が目的になっているパッケージの羅列は、単にホテルの商品プラン数を増やし、支離滅裂な無数のプランラインアップは消費者を混乱させ、逆に購買を敬遠させます。

きちんと考え抜かれたパッケージのみが販売されているプランラインアップは、自然とプランの数をある程度の数に集約させ、「販売しているけど月に1部屋も売れない」といったプランがあるような状況にはならないはずです。

マーケットセグメント

既にご紹介した、レベニューマネジメントにおける適切な定義にもとづいたマーケットセグメントに沿ったターゲティングが必要です。そのプランはレジャーセグメント向けのパッケージなのか、ビジネスセグメント向けのパッケージなのかが最初の問いです。

また、例えレジャーセグメント向けのパッケージであったとしても、それはリテールセグメント向けなのかホールセールセグメント向けなのかでも、パッケージの内容は異なります。一方で、それがビジネスセグメント向けのパッケージであった場合、コーポレートセグメント向けなのか、コンソーシアセグメント向けなのかでもパッケージの内容は異なるでしょう。どのマーケットセグメント向けにパッケージを作るか、この問いはその後に考えなくてはならないパッケージ要素をも自ずと方向づけます。

パッケージ要素(パッケージエレメント)

肝心のパッケージの内容です。まず大前提としてはっきりさせておきたい点は、パッケージ=ディスカウントではないということです。パッケージ=ディスカウント(割引)という認識が広く共有されていますが、私はパッケージは必ずしも割引を伴わないといけないものであるとは考えません。そこに金銭的なインセンティブを伴わないパッケージであれば、部屋代金やパッケージ要素の割引は必要ないと思います。

パッケージ要素は大きく2つに大別されると考えます。まず1つ目は、価格で魅力を伝えるものです。これは多くの皆さんにとって非常になじみのあるパッケージの形で、例えば朝食つきのパッケージなどは代表的な例でしょう。宿泊パッケージにおける朝食つきプランは、通常、朝食の料金をレストランでのメニュー料金ではなく、朝食のコスト料金を上乗せすることによって、そのお得感を演出します。

例えば、宿泊料金が1泊20,000円、館内レストランで販売している朝食のメニュー料金が1人あたり3,000円で、1泊2名で宿泊するとしましょう。お部屋代のみのプランで予約をし、翌朝、レストランに出向いて朝食を食べた場合、料金は下記のようになります。

20,000円(宿泊料金)+ 6,000(朝食メニュー料金 3,000円 x 2名)=26,000円

ただ一般的な朝食つきパッケージの場合は、メニュー料金をそのままパッケージ料金に含めることはなく、ブレークダウンと呼ばれるコスト+α(もしくはコストのみ)の料金を上乗せします。

20,000(宿泊料金)+3,000(朝食ブレークダウン 1,500円 x 2名)=23,000円

この場合、消費者にとってこのパッケージが「別々に買うよりパッケージとして買った方がお得」という金銭的なインセンティブとなり、購買が促されることとなります。

また、これはホテルにとってもメリットになります。「メニュー料金より安くて大丈夫なのか?」と訝しげに思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「宿泊客へのサービス提供の一環」という意味合いが強い朝食は、そこから利益を生み出そうというよりかは、コスト程度がまかなわれて、ホテルとして損をしなければ良いという考え方ができますし、そもそも朝の時間帯のレストランは、宿泊客の朝食利用でしか売り上げは成り立ちません。朝食つきのプランは、レストランが特に集客活動をしなくても自動的に言わば「送客」があるわけですから、必ずしもメニュー料金で販売しなくとも少しでも利益があれば、もしくはコストさえまかなえれば、それで御の字と考えるのが一般的です。

そして2つ目は、その内容で魅力を伝えるものです。このタイプのパッケージは、必ずしも価格がパッケージ購買の動機とはなりません。パッケージとは宿泊と宿泊以外の要素を組み合わせたものをさしますが、その組み合わせによって顧客の利便性が向上するなどの価値があれば、それは立派なパッケージの購買動機となるでしょう。

例えば、シティホテルなどでよく見られる「お受験パッケージ」を見てみましょう。このパッケージのターゲットはまぎれもなく受験生なわけですが、受験生が求めているものはなんでしょうか?お部屋の価格が安いことでしょうか?メニュー料金より安い朝食料金を含む朝食パッケージでしょうか?

受験生が求めているもの、それは「試験に最大限集中できるような環境であり、安心感」です。それは例えば、夜遅くまで部屋にこもって勉強できるように夕食や夜食が含まれたパッケージかもしれないですし、当日、試験会場までの交通手段があらかじめ準備されたパッケージかもしれません。試験当日に持っていくことができるランチボックスも非常にありがたいでしょうし、当日は身軽で会場に向かい試験に集中するために、身の回りのものは別途宅配便で自宅に送ることができるパッケージも喜ばれるかもしれません。

これらに共通することは、あらゆる煩わしい手配があらかじめパッケージ化されていて個別の手配が必要なく、顧客(受験生)は試験に集中することができるという環境と安心感の提供であり、ここであえて部屋の料金を割引してパッケージ要素に組み込んだり、ランチボックスの料金をコストのみでパッケージ要素に組み込むなど、価格が安いことをインセンティブとする必要はないわけです。

パッケージの目的は必ずしも「お得に部屋に泊まれること」ではなく、「部屋に泊まる以上の価値を顧客に提供すること」です。その価値を割引によって演出するのであれば、部屋料金、もしくはその他のパッケージ要素の金銭面でのインセンティブが必要になりますが、その価値が価格以外の要素に見出されている場合、必ずしも部屋料金やパッケージ要素の割引は必要ではありません。

その価値は上記のような安心感の場合もあるでしょうし、なかなか予約が取れないレストランの席の確約、希少性かもしれません。ホテルが提供する様々なアクティビティを上手に組み合わせた、その提案そのものが価値に値するかもしれないのです。

次回は考慮しなくてはならないその他の要素、価格設定などの項目について見ていきます。