レートパリティの迷宮へようこそー彼を知り己を知れば百戦殆からず(2)

メタサーチ上などでレートパリティが保たれていない状況を確認した場合は、内部要因→外部要因の手順でその理由を突き止めていきましょう。前回の「レートパリティの迷宮へようこそ―彼を知り己を知れば百戦殆からず(1)」では、まず内部要因から確認するポイントとして、登録料金に誤りがないか、税サ設定などに不備がないかなどの点について挙げました。この内部要因に原因を見出だせない場合は、外部要因を確認しましょう。

(外部要因)

ここまで確認しても内部要因にその原因を見つけられない場合、次に検討しなくてはならないのが外部要因です。これは言わば、ホテルは正しく設定しているにも関わらずOTAなどの販売元が登録料金通りに販売しない「OTAが仕掛けるトリック」です。

まず、外部要因によると思われる不審な価格操作を発見した場合は、必ず、できるだけ多くのスクリーンショットを保存しましょう。販売元による価格操作は、コンピューターのアルゴリズムによってほぼ機械的に行われています。また皆さんが今、該当の販売元でその不審な価格操作を発見したからといって、1時間後にまた同じ価格操作を発見できるわけではありません。不審な価格を発見した際は、その場で、まずスクリーンショットを取りましょう。

スクリーンショットも、メタサーチの画面のスクリーンショットを取るだけでは不十分ですし、それだけでは販売元も調査をしてくれません。先に説明したキャッシュやARIのPUSH/PULLのタイミングの可能性の場合もありますので、メタサーチ上のスクリーンショットに加え、必ず販売元のスクリーンショットも取るようにしてください。

各販売元のマーケットマネージャーは、調査に足りる十分な物的証拠(スクリーンショット)がないと動いてくれません。常日頃から定期的にメタサーチを観察し、不審な料金や在庫状況を発見した場合には、その都度スクリーンショットを取ることを心がけ、その物的証拠を積み上げていきましょう。

特に世界の四大OTAである「A」「B」「C」「E」による価格操作のトリックは、非常に洗練されています。このように言わなくてはならないことは非常に残念ですが、彼らのテクニックはホテルが考えるよりはるかに優れていて、そのずる賢さは私たちの想像を超えています。ここでは、彼らが用いるそのテクニックの一部を紹介しましょう。

(検索元の国ごとに異なる料金を表示させる)

これは日本のあるホテルの、グーグルにおける同条件での検索結果の比較です。同じホテルを同じ宿泊条件(日にち/人数)で検索していますが、左はアメリカのIPアドレスからホテルを検索した結果、右が日本のIP アドレスからホテルを検索した結果です。

IPアドレスとは、ネットワークに接続する際に個々の機器に割り当てられるネットワーク上の住所のようなものです。皆さんが自宅、ないしはオフィスからインターネットにアクセスする際は、その場所がおおまかに特定されており、その検索元の国により異なった価格を表示させる手法はOTAで一般的に使われています。

日本のあるホテルのGoogleにおける同宿泊条件での検索結果、左がアメリカのIPアドレス、右が日本のIPアドレス

このホテルにおいては、アメリカのIPアドレスから検索した時のみ、左下にホテルの公式ウェブサイトの料金が表示されました(これはBook on Googleと呼ばれる、消費者がGoogle上で予約を完了できる仕組みです。料金と在庫は公式ウェブサイトから引っ張ってきています)。

まず本題に移る前に、このホテルはOTAでは軒並み134ドルで、一方の公式ウェブサイトでは、その金額より100ドル以上も高い250ドルで部屋が販売されているようです。料金自体がそもそも違うのか、販売されている在庫情報の相違によりこのようになっているのか詳細はわかりかねますが、このようなことは絶対にあってはなりません。もし公式ウェブサイトとOTAで料金をわけているのであれば、このようにメタサーチ上で一気に表示できる環境の中、あまりにも拙速すぎると言わざるを得ませんし、もし料金をわけていないのであれば、料金・在庫の管理の仕方に大きな課題があると言えるでしょう。

このような時に「料金を変更し忘れた」、「在庫を閉め忘れた」という言い訳をよく聞きますが、厳しい言い方をすればそのような言い訳はこのメタサーチ上に記載できません。ここに表示される価格がすべてであり、そのような「〇〇忘れ」が販売状況に影響しているような環境においては、その担当者の能力に原因を求めるべきではなく、そのような仕組みに原因を求め、その仕組み自体を変えるべきです。

さて本題です。左はアメリカのIPアドレス、右は日本のIPアドレスで表示させた結果だと申し上げました。先に申し上げた通り、メタサーチは検索元の国によって税サの表示をその国ごとの商習慣にあわせて表示させます。アメリカで検索した場合は自動的に税サ別に、日本で検索した場合は自動的に税サ込で表示させます。

まず、アメリカのIPアドレス上の1番上の「E」をクリックして最終金額を確認します。実際に販売元に行って確認した結果、税サを含む最終の金額は153.4ドルという表示でした。この153.4ドル(154ドル)という金額は、その日の為替で16,092円に相当するようです。

アメリカのIPアドレスにおける「E」の最終価格

ここで改めて日本のIPアドレスから「E」経由で、同じホテルを同じ日程で確認した結果を見てみてください。その結果は17,814円と表示されており、どうやら例え同じ「E」からの予約で、なおかつ「同じタイミングで、同じホテルを、同じ滞在条件」での検索であっても、日本で予約する場合はアメリカで予約するより2,000円近く高いようです。日本の検索結果の一覧は原則、込込表示に統一されています。(もし仮に17,184円が別々表示だった際は、さらに差額が開いてしまうことになります・・・)

同じ検索条件、日本のIPアドレスにおける検索結果

同じ最終金額の数字を突き合わせてみても、「どこの国から検索するか」によって異なる料金を表示するテクニックを使うことがお分かりいただけるでしょうか。

もう1つの例を出しましょう。ホテルの誰もが認識している問題児の1つ「A」における、あるホテルの検索結果の検証です。

2名の検索結果で表示された「A」から予約を進めようとすると、実際は定員超過で予約ができない

このホテルは、日本においてメタサーチに自社エンジンを掲載する施策を行っているようです。(xxxxxxxx TOKYO 公式サイト を参照)自社の料金はほとんどのOTAより安い結果となっていますが、「楽天トラベル」などの一部のOTAではさらに下回る価格が販売されているようです。税サ表示のテクニックを使っているのかという点は調べる必要はありますが、これでは一見すると、ホテルが自らお金を払って自社エンジンに誘導する施策に参加の上、「楽天トラベルの方が安いのでそちらで予約して下さい」と言っていることにもなりかねません。料金なのか、税サ表示なのかはわかりませんが、その点をすぐに修正する必要があります。

今回は「A」の話ですので話を進めます。私はグーグル上で「2名」と入れて検索をしました。その結果「A」で表示された9,354円で予約を進めようとしましたが、予約を進めると実際には「2名では宿泊できません」という表示が出てきてしまいました。この部屋の特徴を見ると、確かに2名で宿泊はできますが、あくまでも「大人1・子供1のみ収容可能」となっており、大人2の場合はこの部屋タイプを収容できないようです。

グーグルの検索条件には大人と子供を指定する欄はなく、あくまでも人数のみでの設定となります。他の販売元、BやEなどとの料金差を考えると、恐らく他の販売元はグーグル上での2という検索条件をきちんと大人2と解釈しているのでしょう。一方で、Aは料金を安く見せるテクニックに1つとして、大人と子供、関係なく人数に含ませるというアルゴリズムを組んでいる可能性があります。他のOTAが軒並み同じ料金で表示されている(=大人2名と解釈している)のに対し、Aのみは子供含めた解釈をしているようですが、これを「Aの設定の未熟さ」に理由を求めない私は疑いすぎでしょうか?

さらに話を進めます。安い料金につられてクリックしたものの、結局、大人2名という検索条件での同価格での予約ができないと知った私は、やむなく、大人2名が収容可能な部屋タイプを選択しました(そしてこれこそが、Aの狙いだと私は思います)。そして最終金額まで確認した結果、その料金は12,870円であり、他の販売元と料金は変わらないという結論に達しました。

このような消費者を惑わせるトリックについても、放っておいてはいけません。税サの表示を他のOTA同様の統一し、人数の誤解を生むような仕組みを使わないよう、Aのマーケットマネージャーと話して状況を是正させなければいけません。

しかし問題はこれだけにとどまりません。同じホテルが異なるIPアドレス、検索元でどのような料金表示となっているか、再び、アメリカと日本のIPアドレスを使って比べてみた結果、またもや「きな臭い」料金が出てきました。

同滞在条件での検索だが、日本(左)とアメリカ(右)のIPではAの価格が大きく異なる

先ほどの検証で「日本での検索結果におけるAの9,354円は、税サが含まれていない料金だ」ということがわかっています。一方で、右のアメリカでの検索結果において、もともと税サ別の料金表示が行われます。9,354円と65ドルとは、ずいぶん大きな差がありますね。最終料金まで確認しようと両方のIPアドレスから最終金額の確認画面までいったところ、次のような結果となりました。同じ宿泊条件と人数で検索しましたが、検索IPが違うだけで結果的にはこれだけ価格に違いが出ていることが判明しました。78ドルは8,200円ほどですから、4,600円ほどの価格差が出ていることがわかります。

しかしここで1点注意しなくてはならないことは、キャンセル期限の違いです。アメリカのIPアドレスで検索した左側の結果は「Non-Refundable」(返金不可)となっているのに対し、右側の日本の検索結果は「3日前までキャンセル可能」となっています。

キャンセル期限に違いがあるのであればこの価格差も納得できるものということかもしれませんが、それではなぜ、そもそも日本で検索した場合はこの返金不可のプランが出てこなかったのでしょうか?

これが「多くのホテルが四大OTAと直接契約をして料金登録をおこなっているにも関わらず、登録料金とは異なる料金で販売される実例」です。次回はそこに働いているトリックを実際にひも解いてみたいと思います。