グループ料金をどのように導き出していますかーディスプレイスメントアナリシスとは(2)

前回の「グループ料金をどのように導き出していますかーディスプレイスメントアナリシスとは(1)」では、ディスプレイスメントと呼ばれる定義の説明とともに、グループの引き合いによってディスプレイスメント、ビジネスの置き換えが必要な際に、その妥当性と販売金額を算出する、ディスプレイスメントアナリシスの目的を説明しました。

今回は、実際にディスプレイスメントアナリシスのやり方と仕組みを説明していきましょう。

ディスプレイスメントアナリシスの考え方

ディスプレイスメントアナリシスとは、ビジネスの置き換えが発生するときに、「置き換えられるビジネス」と「置き換わるビジネス」を比べ、その妥当性と、置き換わるビジネスの適正な販売金額を導き出す方法です。その軸となる考え方は非常にシンプルで一貫性があります。「置き換えられるビジネス」と「置き換わるビジネス」の双方から得られる売り上げと、それに関わるコストを差し引いた純売上を算出したうえで、その妥当性を判断します。

置き換えられるビジネス:グループによって影響を受けるビジネス

置き換わるビジネス:グループビジネス

もし置き換わるビジネスが、置き換えられるビジネスよりも大きな利益をホテルにもたらす場合、その置き換わるビジネス(グループの引き合い)を受け入れることは、純収入の点からは妥当と言えます。一方で、置き換わるビジネスが、その引き合いを受け入れることによって置き換えられるビジネスの純収入を下回る場合、その置き換えは売り上げの点からは妥当とは言えません。もしそれでも引き受けるのであれば、置き換えられるビジネスの純収入を上回る水準まで、置き換わるビジネス、すなわちグループの販売料金を調整する必要があります。

では、実際に例を見ていきましょう。

総客室数100室のあなたのホテルに、4月15日、16日、17日の3日間のグループの引き合いが来ました。その妥当性と金額を算出する上でまず、手元に用意しなくてはいけない資料が、4月15日、16日、17日の現時点(グループを受け入れる前)のフォーキャストです。4月はピークシーズンという事もあり、もともと、80%を超える高い稼働が予想されています。

そして今回の引き合いの内容は、以下の通りです。

さらに、このグループの引き合いに現時点でのフォーキャストの数字を勘案すると、以下のような状況になります。100室のホテルに対して、このグループを行け入れることにより101室以上の需要が来てしまう、すなわちディスプレイスメントが発生します。

当然、ホテルとして受け入れ可能な最大の客室数能力は100部屋ですから、もしこのグループを受け入れると決断した場合、当初予定されていたフォーキャストのうちのいくつかの部屋のビジネスを、グループビジネスに置き換えなくてはなりません。つまり、ここでは「ビジネスの置き換えが必要な状況」、ディスプレイスメントが発生する状況となり、その妥当性を判断するディスプレイスメントアナリシスの出番となります。

まずは、このグループを受け入れることにより「置き換えられるビジネス」の純売上を算出してみましょう。

1, 置き換えられるビジネス

このグループビジネスを引き受けることによって断らなくてはならない、当初、予想されていたビジネスです。ここでは100室以上出てしまった部屋数分を指します。

2, 置き換えられるビジネスの販売金額

上記で発生した、「置き換えられるビジネス」の販売金額を算出します。ホテルとしてマーケットセグメントが1つであれば、その販売金額を算出することは容易かと思いますが、たいていのホテルや宿泊施設は、リテールセグメントやコーポレート、ホールセールなどとそのマーケットセグメントは多岐に渡ります。ではいったい、どのマーケットセグメントの販売金額を当て込めば良いのでしょうか?

ブッキングペース全体を見たときに、実際に、部屋の置き換えが必要になってくるのはいつのタイミングでしょうか?例えば、表では4月15日に22部屋分の置き換えが必要となっています。ホテルが4月15日宿泊分の販売受付を開始してから、10部屋、20部屋と徐々にお部屋が埋まってくるわけですが、実際に「当初受け入れ可能であった22部屋が最終的にあぶれてしまう」段階は、はたしていつでしょうか?

これは当然、グループを含めて100部屋がうまった段階です。ブッキングペースが徐々に上がってきて、当初のフォーキャストの82部屋のうちの60部屋分が埋まった段階で、それにグループの引き合いの40部屋を加え、販売室数は100室に達します。つまり言い換えると、リードタイムが短い、より到着日に近い「当初予約するはずだったはずの22部屋分」が予約できないことになります。

通常、ホテルにとってリードタイムが短い、ラストミニッツになって予約されるおもなセグメントはリテールセグメント、一般料金のセグメントです。したがって、ここでいう「置き換えられるビジネスの販売金額」には、リテールセグメントのラストミニッツの販売金額を当てはめるのが妥当と言えます。

3, 置き換えられるビジネスのコスト

ここでは一口に3,000円と明記していますが、この中には1部屋当たりの変動コストやマーケティングフィ、チャンネルコスト、フランチャイズフィなどのあらゆるコストが含まれます。レベニューマネジメントに携わる人間がこんなことを言っては叱られますが、厳密に列挙していこうとするとキリがありませんので、大きく影響のある費用をおおよそ計上できれば、ほとんどの場合、最終的な判断への影響はないと思います。

以上の数字から算出した結果、このグループビジネスを受け入れることによって置き換えられるビジネスの純売上は1,099,000円と計算することができました。したがって、グループビジネスの純売上がこの金額を上回らない限り、このグループビジネスを受け入れる金額的な妥当性はないといえます。

同じように今回のグループビジネスの純売上を計算したところ、下記のような結果となりました。

ここではグループコストの点だけ、挙げておきましょう。部屋の清掃やアメニティなどの変動コストは、置き換えられるビジネス(例では3,000円)同様に発生しますが、このグループビジネスで忘れてはならない点が、取引の間にエージェントが入っている場合です。エージェントが間に入っている場合は、該当ビジネスに対し送客手数料が発生しますので、上記の例では3,000円のコストに加え、グループ予算金額の10%、1室あたり1300円を送客手数料分としてコストに上乗せしています。

ここでようやく、置き換えられるビジネス(当初の見込みビジネスで、グループを受け入れることによって断らないといけないビジネス)と置き換えるビジネス(グループビジネス)の純売上が算出されました。このグループビジネスを受け入れることによって、断らないといけないディスプレイスメントビジネスの純売上は1,099,000円、一方で該当グループビジネスの純売上は957,000円となり、このままの条件では、このグループビジネスを受け入れず、当初のフォーキャストどおりに販売し82部屋の販売とする方が、売り上げという観点では妥当という結論に達しました。

しかし、グループの販売金額を見直すことによってこのグループの受け入れを正当化するアプローチも当然、残されています。例えば、下記のように、仮にグループの販売金額を14,500円まで上げることができれば、結果的にグループビジネスの純売上が、置き換えられるビジネスの純売上である1,099,000円を上回ることになり、「このグループを受け入れる金額的な妥当性」が裏付けられることになります。

ディスプレイスメントアナリシスは1つの解

ディスプレイスメントアナリシスをもとにグループの引き合いに関する受け入れの可否とその販売金額の妥当性を算定し、1つの客観的な解を提示するのがレベニューマネジメントの役目です。売り上げ(および利益)を最大化することがそのミッションであるレベニューマネジメントの観点において、非常に理路整然としたアプローチであるといえます。

一方で、ここで導き出される1つの解は「レベニューマネジメントとしての判断」ということに留意をしなくてはなりません。ビジネスは往々にして、単純にある一条件の比較だけでは判断できない、また判断してはいけない場合もあります。例えば、そのグループの引き合いが、3か月後に既に予定されている5,000万円規模のグループ案件の視察目的である場合はどうでしょうか?

既に予定されている大型案件を成功させるために前もって視察にくるそのグループに対して、ディスプレイスメントアナリシスによる10数万円の差異を理由に頑なな態度で料金交渉に挑むのは、あまり得策とは言えないかもしれません。

また、毎月のように一定数の規模の宿泊がある契約企業からのグループ案件について、ディスプレイスメントアナリシスによる10数万円の差異を理由に紋切り型の対応を行うことも、あまり得策とは言えないでしょう。

いずれにも共通することは、単に1つ1つのビジネスや案件を点で見るのではなく、全体像の中での位置づけやその関係性を見据えた視点と、物事を俯瞰的に判断する重要性です。そしてグループ案件を持ってくる営業マンは、もしこのディスプレイスメントアナリシスで導き出された結論を覆すに値する他の要素があるのであれば、具体的で客観的な数字、もしくは裏付けをもとにそれを説明するべきです。そこで「この企業はお得意様なので」とか「苦労して取ってきたビジネスなので」といった感情論ばかりを押し付けるようでは、空虚な抵抗にしか映りません。

そこでもし、レベニューマネジメントの主張と営業部の主張の折り合いがどうしてもつかないようであれば、あとは総支配人にその判断を仰ぐまでです。ビジネス上の決定は傍から見ると時に不可解なこともありますが、レベニューマネージャーであるあなたの仕事は、レベニューマネジメントの視点から客観的な事実にもとづいた判断とその提示を粛々と行っていくことです。自らの考えとその根拠をわかりやすく、そして明確に説明する、それがあなたのレベニューマネージャーとしての役割です。

ここまでは、宿泊のみの要素を含むグループビジネスのディスプレイスメントアナリシスについて紹介しましたが、グループビジネスは時に食事や宴会場でのイベントなど、宿泊以外の要素を含む場合も多くあります。次回は宿泊以外の要素が入ってきた場合のディスプレイスメントアナリシスについて見ていきます。