ここ10年ほどで急速にレベニューマネジメントのエリアの1つとして組み込まれるようになった領域が「ディストリビューション」と呼ばれるエリアです。日本ではあまりなじみがない領域ですが、海外においては「レベニュー アンド ディストリビューション」という形で1つの領域として認識されています。

ところでこのレベニューマネジメントはアメリカで発展した経営手法の1つであり、その発展の先進をいくのは今日でも海外においてがほとんどです。日本語に直訳してしまうと本来の意味から乖離する恐れもありますので、基本的には横文字でそのままご紹介しますが、その概念、手法の多くに横文字が使用されることご勘弁ください。できる限り注釈や説明を入れ、わかりやすいように工夫いたします。

2000年代の初めころまで、ホテルの予約は極めてシンプルでした。電話、Fax、ウォークインといった、いわゆるネットワークにつながっていない予約が非常に多く、ネットワークを使った「電子予約」といった類いのものは、大手旅行会社の電算といわれる通知を通して予約されているものにすぎませんでした。(またおいおいご紹介するGDSは1970年代には世界で幅広く利用されるようになった電子予約ですが、日本におけるインバウンドビジネスは2000年代初頭まで低水準にあり、外資系チェーンホテルを除くほとんどのホテルはこのGDSからのビジネスの恩恵をほとんど受けていなかった、もしくはGDSからビジネスを受注する環境すらなかったため、日本のホテルにおける電子予約といえば長らく、ほぼ電算のみであったと考えます)

このオフラインの予約ネットワークに劇的な変化をもたらしたのがOTAというビジネスモデルの登場です。OTAとはオンライントラベルエージェントの頭文字をとっており、エクスペディア、ブッキングホールディングスといったOTAは今日では誰もが知るところでしょう。このOTAというビジネスモデルの登場とその発展は、ホテルの電子予約が飛躍的に増える大きな要因となり、ホテルとしても様々な電子予約を適切に受注してそれを処理する、最適な予約ネットワークの構築が急務となります。その中で生まれた領域が「ディストリビューション」というエリアです。

私自身はこのディストリビューションの意味とその役割を説明するときに「最適な予約ネットワークの構築」という言葉を使いますが、本来はこのディストリビューションは予約ネットワークだけに限った話ではありません。ホテルにおけるあらゆるネットワークの全体像を言い表し、例えば顧客データを管理するCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)や、ホテルにおいて清掃状況や滞在客からのリクエストまでを一元管理する、ホテルオペレーションマネジメントシステムもこのホテルディストリビューションの一部分です。

現在のレベニューマネジメントはこのディストリビューション、予約ネットワークの最適化の領域を含んでおり、レベニューマネジメントにたずさわる方たちは、単にPMS (プロパティマネジメントシステム)におちてきた予約だけを見て、様々なチャンネルをコントロールする、チャンネルマネージャーを操作するだけでなく、予約ネットワーク網があらゆる予約元と途切れることなくつながり、その通信方法と設計が常に最適化されているかという予約ネットワーク全体に常に目を光らせている必要があります。