「レベニューマネジメントってなんですか?-2」では、レベニューマネジメントには大きく分けると「レベニューマネジメント」と「ディストリビューション」とよばれる2つの大きな領域があるとご紹介しました。このディストリビューションについてもう少し踏み込んで説明していきましょう。
石油業界には川上、川中、川下という区分の仕方があります。川上は石油産業の源流となる油田の探査や採掘、原油の生産を行い、川中ではその原油の精製が行われます。この精製によって原油からガソリンや灯油などの様々な石油製品が生産され、最終的には川下によってそういった石油製品の流通、石油製品由来の化学製品が製造されています。私はホテルのディストリビューションも大きくわけると川上、川中、川下にわけられると考えています。
川上
予約元を指します。旅行会社が使用している予約端末や、ホテルの公式ウェブサイトに設置されている予約エンジン、OTAのプラットフォームやホテルが使用しているそれらOTAの管理画面もすべて予約元となります。この予約元は、何も宿泊予約機能を有するそのものだけを指しているとも限りません。メタサーチなどを提供しているグーグル、トリップアドバイザーなどの検索エンジンも予約元の1つです。インターネットの普及により、今や旅行者は多くの接点(タッチポイント)から予約をすることが可能になりました。従来のようにホテルに電話をして、または街の旅行会社にお願いして予約をすることもできますし、自分でホテルの公式ウェブサイトに訪問してそこから予約手続きをすることもできます。また予約の計画を立てる過程で色々とネット検索をしている中で、そのままグーグルなどの検索エンジンで予約まで完了できるようにもなりました。予約方法がますます多様化し、その仕組みも複雑化する中で、ホテルとして旅行者により多くの、そして使いやすい予約接点を提供する必要があります。
川中
このように予約方法が一気に複雑化する中で、それぞれの予約接点と、最終的にホテルがチェックイン時に情報を参照するPMS(プロパティマネジメントシステム)とがすべて直接、対になってつながっていればこれほど楽なことはないでしょう。例えばグーグルのメタサーチに自らのホテル名とその価格を掲載して、このグーグルのプラットフォームとPMSを直接つなぐことができれば… 例え予約元がいくつ増えようと自分たちが使用しているPMSにそのままつないでもらえばいいだけの話です。(そしてむしろそういう仕組みになっていると考えていらっしゃる方は多いと思います)
残念ながら、ホテルディストリビューションの接続はそれほどたやすい話ではありません。そこにはうんざりするほどの接続制限と技術的限界が存在します。ここで登場するのが川中の存在です。多種多様な予約元からの予約情報を束ね、必要に応じて共通情報に変換し、様々な予約元から入る全予約を最終的に1つの場所に集積する役目を担います。ホテルの全予約が最終的に蓄積される場所、また全予約元に対して料金情報や在庫情報を一斉に発信する場所として、この川中を担うのはCRS (セントラルリザベーションシステム)というシステムが代表的です。また、チャンネルマネージャーというシステムがその役割を果たすこともありますし、次に紹介するPMSへ最終的に予約を送るための「束ね、変換する機能」のみに特化したスイッチャーとよばれるシステムもこの川中に含まれます。
川下
最終的にすべての予約が行きつく先、それが川下です。ほとんどの場合がPMS (プロパティマネジメントシステム)と言えるでしょう。
この川上、川中、川下の図を非常に簡単に示した図が以下の通りです。
レベニューマネジメントに直接たずさわっていない方は、この図の細かいところまで把握する必要はありません。ただ、ホテルの予約ネットワークはこれだけ複雑に絡み合っているという点だけご承知ください。ホテルで実際にレベニューマネジメントにたずさわっている方は、自分たちが使用しているすべてのシステムがディストリビューションの中でどのような位置づけになっているか、すべて把握することが重要です。OTAの予約はどこを経由して最終的にPMSまで落ちてくるか、接続形態は1-wayなのか2-wayなのか(上り、下り)、すべての予約が相互に通信されているのかもしくは部分的な情報しか通信されていないのか、自分たちが使っている全てのシステムと予約元を上記のような図に描くことができますか?
レベニューマネジメントにおいて、このディストリビューションはオンライン予約の多様化と複雑化によりますます重要になってきています。