ディストリビューションとは- 2

ディストリビューションには大きくわけて、川上、川中、川下の役割があるとご説明しました。ここでは、現在のホテルディストリビューションが抱える大きな課題について深堀りしていきたいと思います。

既にご説明した通り、インターネットの普及によりホテル予約の際の旅行者の接点は急激に多様化しました。その多様化はディストリビューションの複雑化をうみだし、その複雑さの度合いには年々拍車がかかっています。しかし川上、川中、川下というようにシステムがお互いに分業され、相互に通信を行っている現環境で、いったい何がディストリビューションの複雑化を生んでいるのでしょうか?例えば、アメリカのある旅行会社の予約システムを、東京のあるホテルのPMSと相互連携し、予約情報や在庫・料金情報が自動で送信されるように対応したいと思った場合、川上の旅行会社は分業の環境に従って川中のシステムと接続すればいいだけの話ではないのでしょうか?ここにはよく「非常に断片化された」(Highly Fragmented)と形容される、ホテルディストリビューションがかかえる大きな問題が存在します。

この川中を仕切っている、セントラルリザベーションシステム、チャンネルマネージャー、スイッチャーとよばれるプレイヤーは複数存在し、すべてのプレイヤーがすべての川上の旅行会社のシステムに連携しているわけではありません。また仮に連携していたとしても、すべての情報の送受信に対応しているとも限りません。先ほどの例で申し上げると「アメリカのある旅行会社の予約システムが、連携したいと思っている東京のホテルの川中のシステムと相互連携に対応していない」といった事象が頻繁に発生します。これは、特に国をまたぐビジネスの場合に顕著で「日本の川中システムを使用していると、いくつかの海外の川上群のシステムとつながらない」、「海外の川中システムを使用していると、いくつかの日本の川上群のシステムとつながらない」という互換性の問題は相当な割合で発生します。そしてこの相互互換性が不十分な状況は、以下の形でホテルに影響を及ぼします。

・ホテルとしての販路拡大の妨げ

・システムの相互通信ができないことによるメールなどでのマニュアルでの予約受注とその管理、システムメンテナンスのための人員配置

・システムの連携確立にともなう追加の金銭的投資

さらにこの互換性の問題は、川上―川中間だけでなく、川中のプレイヤーのシステムと川下のプレイヤーのシステム間にも存在します。「だったら、なるべく多くの川上群と接続できるような川中プレイヤーのシステムを使えばいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、肝心の川上―川中がつながったとしても、今度は川中―川下がつながらない場合も多々存在します。川中、川下のプレイヤーも、このコネクティビティと呼ばれる接続機能を拡充すべく、継続的に投資と接続先の追加を行っていますが、ここには常にコスト、双方のシステムの技術的要件の問題が存在し、つなげてくれと言われたからすぐにつなげられるものでもありませんし、場合によってはホテルへの高額なコスト負担が求められる場合もあります。

皆さんは、例えばあるインターネットサイトでホテルの予約をして、その宿泊予約がホテルのシステムまでどのように伝達されるとお考えですか?またホテルが、たった今しがた承った電話予約で仮に翌日満室になった場合、販売停止の作業はどのように行われていると思いますか?もしかしたら、皆さんがインターネットで行った宿泊予約は、ホテルの人が手作業でホテルのPMSに入力しなおしているかもしれませんし、ホテルの人は翌日に満室になった段階で4つ、5つのシステムに急いでアクセスをして販売停止の作業を行っているかもしれません。

よく考えれば非常に不可解な構造ですが、ホテルが販路を拡大したい、そしてその過程で非常に有望な販売先を確保できたとしても、また、もはや慢性的な問題となっている人不足に対応するため、人員のスリム化を進めようとしても、その経営判断とは別のところでこの「非常に断片化されたディストリビューションの仕組み」が、おのずとその経営判断達成の可否をある程度決めている状況になっています。ホテルはよく労働集約型の産業といわれ、その人材の最適な配置と管理が大きな課題になっていますが、その課題は何も受付スタッフ、清掃スタッフ、レストランスタッフといった現場の最前線で勤務する部署に限った話ではなく、ホテル全般の課題として存在し、そこには企業側の意識改革だけにとどまらず、乗り越えなくてはならない大きな技術的、資金面での壁もあると考えています。