レベニューマネジメントにおいて、レベニューマネージャーはどうしてもその戦術的な仕事である価格コントロールや在庫コントロールなどに目が行きがちですが、商品の販売自体がその職責であることを鑑みると「自分たちの商品がどのように販売されているか」(マーチャンダイジング)という側面でも、すべての販売商品の詳細とその流通形態を把握しておく必要があります。場合によっては、それがある特定のOTAへの販売商品であったり、ある旅行会社限定の特別商品であったりで、レベニューマネージャー自らがその窓口でないことも多々あると思いますが、そういった商品が販売された時には必ずすべての商品を、実際に消費者の視点に立って(ウェブサイトであれば消費者としてそのウェブサイトを訪問して/パンフレットであればそのパンフレットを取り寄せて)確認してほしいと思います。

皆さんのホテルはいま、公式ウェブサイト上でいくつのプランを販売していますか?ホテルの宿泊プランは厳密にいうと「プランと部屋タイプ」の組み合わせで、1つのプランと1つの部屋タイプの組み合わせを通常、1商品と表します。もし仮にプランが10プランあって部屋タイプが5タイプあった場合、それだけで既に商品数は50商品となります。私が以前、あるホテルに宿泊しようとしてOTAでそのホテルのプラン検索をした時は、検索結果に180商品が表示されました。心底うんざりして、安い順にプラン表示順を変更したうえで1番安いプランを予約しましたし、ホテルを予約するときに私と同じような購買行動を取った方も多いのではないでしょうか?

ホテルの公式ウェブサイト1つを見ても、とにかく販売プラン数が多いというのは日本のホテルの特徴といえるかもしれません。部屋代のみのプランから始まり、同じ部屋代のみのプランでもチェックイン時間を遅くしたもの、部屋タイプが指定できないもの、またパッケージに至っては朝食つきからおなじみのクオカードつき、近隣の施設の入場券つきなど、そのプラン内容は非常に多岐にわたっています。

以前、この状況について「これは日本の旅行会社やOTAが “うちだけの商品を作ってくれ”とか”うちだけのプラン特典をつけてくれ” といった営業を常々展開していて、それにホテルがいちいち呼応していた結果だ」と話していた方がいらっしゃいましたが、なるほどと思った記憶があります。私も実際に施設にいた際には、色々なOTAや旅行会社から「弊社だけの特典をつけてくれ」という依頼が常にあったことを覚えています。そのような結果、プランのラインアップを増やし、とにかく「選択の幅を増やすことが良し」とされるような文化が作られたのかもしれません。では、はたして本当にそうでしょうか?とにかく商品数を増やすことがマーケットから求められていて、増やすことによって購買への転換を促すことができるのでしょうか?

ここで、2019年に行われたJTB総合研究所の「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査」から一部の内容をご紹介したいと思います。この質問項目の1つに「インターネットでの旅行予約の際にどのような点を面倒だと感じていますか?」という質問があり、この項目に対する回答がことごとく、日本のホテルが現在抱える問題をそのまま反映しており、私たちに強い問題意識を投げかけているのだと思います。

インターネットでの旅行予約の際に面倒だと感じた点

1,サイトの商品数が多すぎ、探すのに時間がかかる(15.5%)

2,サイト上で入力する項目が多すぎる(14.2%)

3,ネットは日により価格が違い、何回も検索する必要がある(11%)

まず最多を占めた回答は、まさに「サイトの商品数が多すぎ、探すのに時間がかかる」というものでした。ホテルが良かれと思って様々な商品ラインアップを充実させてきたことが、逆に消費者を煩わせるものでしかないという結果でした。2については特にホテルの公式ウェブサイトの予約エンジンの操作性の悪さ、また3はホテル業界全体が抱えるレートパリティの問題が回答にあげられました。これらはすべて、消費者に不便な思いをさせているという点で一刻も早く是正されなくてはならない点であり、上記の1から3のすべてに共通することは、何よりも「ホテルは消費者にとってわかりやすく、見やすい商品提供に努めなくてはならない」ということを示唆しているのだと思います。

私はここで「商品数が多いこと=悪」であったり、「商品数が少ないと購買が促される」という単純な数の解を皆さんに提示しようとしているのではありません。もし商品数が多かったとしても、それぞれの商品がきちんと差別化されていて、ターゲットが明確になっていて、なおかつ互いのプラン内容や価格に矛盾がなければまったく問題はないと思います。そして一方で、そのようにきちんと考え抜かれた商品体系にすると、商品数は自然と絞られてくるでしょう。ぜひ、皆さんのホテルが販売している1つ1つのプランを見直し、特に以下の点について内容を精査してほしいと思います。これらの1つ1つの問いに沿ってプラン内容を検証していくことで、おのずとプランの数は最適な数に絞られてくると思います。

1,誰をターゲットに販売しているのか

2,ターゲットに伴う的確なリソース配分が行われているか

3,パッケージ商品であればお部屋代とパッケージ代の適切なコストの割り振り、アロケーションが行われているか

4,最適な価格設定になっているか、プラン同士でプラン内容や価格の衝突や矛盾は起きていないか

5,プランに応じたステイコントロールはきちんと行われているか

6,必要に応じてフェンスがきちんと設けられているか

さらに、商品数を絞ることによって、ホテルのプラン管理もしやすくなります。販売したこと自体を忘れてしまう、月に1件しか入ってこないようなプランを100個並べておくより、継続的な販売実績があり顧客からの反応も高いプランを5つ販売する方が、ホテルとしての注意も向けやすくなりますし、より弾力的な管理も可能となります。

しかしこのような、考えられた商品体系でプランが販売されているホテルは驚くほど少なく、とにかく新規プランを作ることだけが目的になっているホテルが非常に多いように思います。例えば2月1日から1泊のプラン検索をした際に、同じスタンダードルームのお部屋代のみの料金が1室10,000円、お部屋代のみでさらにクオカード1,000円分の特典がついたプランが9,000円であった場合、この2つのプラン間の価格の整合性をどう説明したら良いのでしょうか?なぜお部屋代にさらに1,000円分の追加バリューがついた商品の方が、価格が安いのでしょうか?そもそもこのような商品体系で、お部屋代1室10,000円のお部屋代のみのプランを販売する意味はあるのでしょうか?

多くの情報が氾濫している現在においては、いかに各々の消費者にとって最適な情報や提案を、迅速に、的確に、わかりやすく伝えるかが消費者から求められています。ましてや公式ウェブサイトには店舗のような「物理的な商品スペース」がなく、商品を置いておこうと思えば無限の数を置いておけるような環境ですから、とりわけその商品在庫管理は緩くなりがちです。しかしいくら物理的商品スペースに限りがなくても、消費者の目に留まる商品数は限られています。

ただ闇雲にプランの数だけを増やし、1つ1つのプランを販売する意図が考え抜かれていない単なるプランの羅列は、商品の購買につながらないだけでなく、消費者に不信感を抱かせることになるでしょう。大切なことは、プランはできる限り増やした方がいい、減らした方がいい、〇個のプランが最適といった単純な答えではなく、各プランの販売がそれぞれの目的に資する形で最適化されており、ホテルによってきちんと考え抜かれた上での商品体系となっているか否かという点です。

参考:スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2019)・研究レポート – JTB総合研究所 (tourism.jp)